骨と関節のQ&A・用語辞典
質問
私はリハビリの職業についているものです。変形性ひざ関節症の高齢者の介護をすることがよくあります。歩行の安定性を図るために筋力訓練を行っていますが、時々ひざが「コキコキ」と鳴り、痛みを訴える方がいらっしゃいます。音や痛みの原因は何ですか。そのような際には筋力訓練を勧めないほうがいいのでしょうか?
答え
ひざ関節を動かしたときに鳴る音は関節の中でなっている場合と関節の周囲でなっている場合との2つがあります。関節の中でコキコキと鳴っているのは関節軟骨の表面がすり減り、滑らかさが失われている場合です。この状態を変形性ひざ関節症といいますが、関節軟骨の表面がすり減っている状態は65歳以上の人では85%、80歳では100%にも達しているとの解剖所見の報告があるぐらい高齢者にはよく見られるひざの変化です。軟骨がすり減った場合でも必ずひざ関節痛を訴えるとは限らず、90%近くの人は殆ど治療を受けないで過ごせるものと推定されますので、「コキコキ」となったからといって1律に筋力強化訓練を中止する必要はないと考えます。
しかし、強い痛みを伴って「コキコキ」と鳴るのは痛みを感じない軟骨の表面だけの問題ではなく、軟骨の下にある骨がぶつかり合っているためか、軟骨が大きくすり減っているために関節に緩みが生じて関節周囲の靭帯や関節の袋が強く引っ張られ、ねじれているためかもしれません。この場合は、関節を傷めて、いつまでも痛みが継続するといったことにもなりかねませんので筋力訓練の方法を自主トレーニングなどに変更し、負担を軽くする必要があります。
コキコキ音の原因として関節の外で鳴るのはひざ周辺の骨のでっぱりなどを筋肉や靭帯が緊張した状態で滑って乗り越えた場合にヨットの帆を張ったり、指をならしたりするのと同じ原理でパーンと鳴るものです。これを弾発ひざといい、弾発ひざでは特に治療せず放置してよいとされています。この場合の音は「コキコキ」とは少し異なります。
関節が傷んでいる場合の自主トレーニング法のメニューとしては、側臥位で休ませて上側の下肢を外転させたり、背臥位で休ませて両足首に回したゴムバンドを広げるといった股関節外転筋強化訓練をさせますと訓練によるひざ関節への影響がなく歩いた際にひざの安定性を増して痛みを減らすことが出来ます。また、椅子に腰をかけさせ交互に下腿を水平にまで上げ、その肢位で3〜5秒間保持する、これが容易に出来れば足首に0.5〜1.0kgのおもりを巻きつけ同じ自主訓練をさせる、なども有効です。これらの自主訓練で大腿四頭筋の筋力が十分に強くなれば痛みも減少して、コキコキ音も減ると思います。
( 監修 / 林 泰史先生:原宿リハビリテーション病院 名誉院長 )
後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai