骨粗鬆症と関節痛の総合情報サイト
RICHBONEロゴ 女性イラスト
検索の詳しい説明

検査診療サーチ
最寄りの施設や診療機関を探してください。
※2008/10/31現在、
掲載数3,974
骨量測定
骨粗鬆症の診療
関節痛の診療
さあ、今すぐチェック!
骨の健康度チェック
ひざの健康チェック
転びやすさ度チェック
転ばない住まいチェック
トップページ
サイトメニュー一覧
骨と関節に関する調査結果 編集後記 お知らせ リンク集 更年期を健やかに 関節と関節痛 コラム 転倒予防のために カルシウム料理 骨と関節のQ&A イベント・セミナー 専門用語辞典 richbone通信 サイトマップ 保健・医療・福祉関係者 骨と骨粗鬆症

骨・骨粗鬆症

保健・医療・福祉関係者の皆様へ > [連載]転倒予防と骨粗鬆症(1) 総論 転倒予防と薬物療法

総論 転倒予防と薬物療法

東京都老人医療センター院長
林

1. 骨粗鬆症診療の目標

40年前には腰痛の軽減に意を注いでいた骨粗鬆症診断・治療の目標が、その後はより科学的にまたはより広角的にと変遷・発展を遂げてきた。約20年前からの骨量計測機器の開発・普及、骨量増加作用の確認された治療薬の活用、約10年前からの骨折頻度抑制効果の実証、そして21世紀に入ってからはより多くのエビデンスを示す治療薬の登場といったように骨粗鬆症診療は着実な歩みを見せてきている。
一方、骨粗鬆症患者に対する調査などで判明していることは患者は痛みのない生活を生涯にわたって送りたいことと、寝たきり状態など身体機能が著しく低下する状況は避けたいことの2点に絞られている。従って、骨粗鬆症の終末像ともいわれる大腿骨頸部骨折を惹起させないことが診療目標としては大きな位置を占めることになる。ところが、大腿骨頸部骨折の発症頻度に関する全国調査では1987年には約53,200件であったものが、2002年には約117,900件と15年間に2.2倍にも増加している(文献1)(図)。

大腿骨頸部骨折患者数の5年毎の推移
このために医療サイドからの骨強化を通して骨折を予防する手法に加えて、福祉・介護サイドからの転倒予防やヒップ・プロテクター装着を通して骨折を予防する手法が全国展開されているのが現状である。骨粗鬆症を正しく診断し、治療することの究極の目標としては骨折を防いで痛みのない生活や日常活動性を維持することであるが、これらの目標のいずれをも適える薬剤としてビタミンD剤の多角的な作用が明らかにされてきたので順次述べていく。
2. ビタミンDの転倒予防効果

大腿骨頸部骨折患者3,053例の月別発生頻度を調査したHolmberg,S.の報告では春・夏に比べて冬期には2〜3割も骨折発生数が増えることや大腿骨頸部骨折患者には骨軟化症を呈する骨組織像を有する例が多いなどの報告がみられる(文献2)。また、Chapuy,M.C.らは平均年齢84歳の元気で歩行可能な高齢者を2群に分け1群には800単位のビタミンDとカルシウムを与えたところ、偽薬を内服した群に比べてビタミンD内服群では18か月間における大腿骨頸部骨折数は43%の減少と有意の差をみた(文献3)。ところが、18ヶ月後の大腿骨頸部密度はビタミンD内服群で2.9%増加したのに比べて偽薬内服群では1.8%増加と両者の違いは1.1%しかないなど骨密度の増加以外に大腿骨頸部骨折率抑制に貢献している他の要因の存在が示唆された。同様の経験は国内におけるアルファカルシドール投与例においても認められた。平均72歳の女性26名には1年間にわたりアルファカルシドールを1日1μg内服させ、34名には同期間に偽薬を内服させた。その結果、腰椎の骨密度は実薬群で0.65%増加、偽薬群で1.14%減少とその差は2%以内でしかなかった。しかし脊椎骨折発生率は実薬群で75骨折/1000人・年と偽薬群の272骨折/1000人・年の約1/4に減少し、この研究でもビタミンDの骨密度増加作用以外の働きが示唆された(文献4)。

ビタミンDの骨折率抑制効果については骨量増加作用以外に骨質改善作用・筋力強化による保護用の存在などが推論されてきたが、2000年頃からビタミンDの筋力増強作用、体幹動揺防止作用、そして転倒予防作用が明らかにされ、長年月に及ぶ推論のなぞが解けたのである。

3. ビタミンDの筋力増強・体幹動揺防止・転倒防止作用

オランダ・ユトレヒトのVerhaar, H.J.J.らは低ビタミンD血症の14人の女性に6か月間にわたりアルファカルシドール0.5μg/日を内服させたところ、内服前に比べて10〜12%も膝伸展筋の筋力が増した5)。また、立ち上がって3m先の柱を回って帰って再び座るといったアップ・アンド・ゴーテストに要する時間は約2/3に短縮したが、握力には変化がなかった。同じ介入実験を13人の正常ビタミンD血症の人に行ってもいずれの価にも差がなかったことからビタミンDの近位筋増強作用は確実となったのである(文献5)。

血中ビタミン濃度と体幹動揺との関係

ドイツのPfeifer,M.らは図に示すように平均63歳の女性273人について体幹動揺の速度と血中ビタミンD濃度との関係を調べたところ、有意な逆相関をみたと報告している(文献6)。さらにスイスのBischoff,H.A.らは平均85歳の高齢者122名に1日1200mgのカルシウムを12週間にわたり投与し、そのうち62名には1日800単位のビタミンDを併用させた。その結果、表に示すようにビタミンD併用群はカルシウム剤単独群に比べて転倒回数は半減していた(文献7)。

ビタミンD投与による転倒軽減効果

このようにビタミンDまたはその誘導体の転倒頻度抑制効果が次々と明らかにされてきたが、2000年から2004年までの4つの海外の文献をまとめるとビタミンD内服により転倒頻度は41〜53%減少していた。
筆者は活性型ビタミンDを投与して骨量を増加させた患者の臨床像として体格がしっかりとして大きくなる、活動的になるとの印象があると15年前頃に記述したことがある。この印象が科学的に証明され、また日本の臨床医が活性型ビタミンDをいつまでも好んで処方する理由がわかったようで嬉しく思っている。


文献
1)折茂肇、坂田清美;第4回大腿骨頸部骨折全国頻度調査成績、日本医事新報.4180:25-30,2004.
2)Holmberg, S. Thorngren, K-G. ; Statistical analysis of femoral neck fractures based on 3053 cases. Clinical Orthopaedics, 218 : 32-41, 1987.
3)Chapuy, M.C., Arlot, M.E. Duboeuf, F., et al. ; Vitamin D3 and calcium to prevent hip fractures in elderly women, New Eng, J. Med, 327 : 1637-1642, 1992.
4)Orimo, H., Shiraki, M., Hayashi, Y., et al. Effect of 1α-hydroxyvitamin D3 on lumbar bone mineral density and vertebral fractures in patients with postmenopausal osteoporosis, Calcif. Tissue Int. 54 : 370-376, 1994.
5)Verhaar, H. J. J., Samson, H.M, Jansen, P.A.F. et al. ; Muscle strength, functional mobility and vitamin D in older women. Aging Clin. Exp. Res. 12 : 455-460, 2000.
6)Pfeifer, M., Begerow, B., Minne, H. W., et al. ; Vitamin D status, trunk muscle strength, body sway, falls, and fractures away 237 postmenopausal women with osteoporosis. Exp. Clin. Endocrinol, and Diabetes. 109 : 87-92, 2001.
7)Bischoff, H.A., St=felim, H.B., Dick, W. et al. ; Effect of vitamin D and calcium supplementation of falls : A randomized controlled trial. J. Bone and Mineral Res. 18 : 343-351. 2003.
▼関連ページ