鶴上整形外科リウマチ科(熊本県玉名市)
鶴上 浩
骨粗鬆症治療の主体は、骨折予防を目的とした薬物治療にある。さらに2004年日本でも塩酸ラロキシフェンが発売され、薬剤選択の幅が徐々に広がってきている。近年、ビスフォスフォネート製剤、ビタミンD3製剤、エストロゲン製剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの薬剤について、骨折予防効果のエビデンスが報告された。これらのエビデンスは、薬剤選択時の重要な手がかりとなっている。しかし、実際の診療の現場において、個々の症例に対して最適な薬剤を多数の薬剤の中より選択することは、いまだ困難である。疼痛を主訴に受診する症例が多い整形外科外来における骨粗鬆症薬物治療について述べる。
骨折予防効果のエビデンスがある薬剤
骨粗鬆症の薬物治療の目的が骨折予防であるため、骨折リスク因子が多い症例ほど骨折予防のエビデンスを有する薬剤が選択されるべきと考える。現在、使用可能な薬剤は、ビスフォスフォネート製剤、ラロキシフェン、エストロゲン製剤、ビタミンD3製剤、カルシトニン製剤、ビタミンK2製剤である。なかでも、最も多くのエビデンスを有するものはビスフォスフォネート製剤であり、アレンドロネートやリセドロネートは脊椎骨折の発生を約40〜50%に低下させる。また、ラロキシフェンは脊椎骨折の発生を30〜55%低下させる。ラロキシフェンは、ビスフォスフォネート製剤のように服用に制限がなく、さらに乳癌の発生を低下させるなど副次的効果も期待される。活性型ビタミンD3製剤は脊椎骨折予防効果のみならず、筋力増強作用によると考えられる転倒頻度の低下及び骨折頻度の低下が報告されている。カルシトニン製剤は日本での大規模臨床試験では、骨量増加効果は認められたが、残念ながら脊椎骨折予防効果は見られなかった。ビタミンK2製剤についても大規模臨床試験ではカルシウム投与群と脊椎骨折予防効果が同等であったが、高齢者(75歳以上)と多発椎体骨折症例(椎体骨折5個以上)に限って、椎体骨折発生が抑制された。
以上の薬剤を現在得られている骨折予防のエビデンスの強さから考えると、強い骨折予防効果を持ったビスフォスフォネート製剤、ラロキシフェン、エストロゲン製剤と、弱い骨折予防効果を持ったビタミンD製剤、十分なエビデンスが示されていないカルシトニン製剤、ビタミンK製剤に分けることができるかもしれない。
骨折のリスクを評価する
骨粗鬆症薬物治療を行うに当たり重要なのは、骨折リスクの評価を行うことである。骨折リスク因子として重要なものは、(1)脆弱性骨折の有無(2)骨量低下の有無(3)骨代謝マーカーの上昇(4)年齢、である。そのほかにも、低体重、易転倒性、二次性骨粗鬆症の有無(関節リウマチやステロイド剤の服用など)も考慮する必要がある。これらのリスク因子が多いほど、骨折のリスクは上がると考えられる。そのためリスク因子の数に応じて薬剤選択を行うことになる。つまり、リスク因子の多い症例は上記のビスフォスフォネート製剤やラロキシフェンを使用し、リスク因子の少ない症例は、ビタミンD製剤、ビタミンK製剤などを使用する(表)。さらに骨折リスクが3個以上ある症例については、併用投与の適応になると考えられる。
骨折リスク因子の数と薬剤選択
| 項目 |
リスク数 |
薬剤 |
| 1. 低骨量 |
1 |
ビタミンD単剤 or ビタミンK単剤
|
| 2. 脆弱性骨折あり |
| 3. 骨代謝マーカー高値 |
2 |
ビスフォスフォネート単剤or ラロキシフェン単剤 |
| 4. 高齢者 |
3 |
ビスフォスフォネート+
ビタミンD or ラロキシフェン+ビタミンD |
| 5. 低体重 |
※Life Style:起床時内服困難→ラロキシフェン
※合併症:血栓症(+)→ビスフォスフォネート、胃腸障害(+)→ラロキシフェン
※副次効果:高脂血症→ラロキシフェン
単剤投与と併用投与
現在、併用投与については、確立した組み合わせは存在しない。骨粗鬆症の薬物治療を開始する際には、単剤を投与するのが原則である。しかし、治療開始後に治療の目安となる骨代謝マーカーや骨密度に期待される効果が得られない時は、薬剤の変更もしくは併用投与を行う。骨折を契機に受診する機会の多い整形外科では、骨折リスク因子を多数持った症例が多く、ビスフォスフォネート製剤やラロキシフェンを選択することが多くなる。ビスフォスフォネート製剤開始後4〜6カ月で骨吸収マーカーを再検するが、骨吸収マーカーが有意に低下していない症例が約10〜20%見られる。骨代謝マーカーが有意に変化しない原因は多数考えられるが、明らかに骨吸収抑制剤の効果が出ていないと思われる症例(いわゆるnon-responder)にビタミンD製剤を併用すると、骨吸収マーカーが速やかに低下することがある。これは、強力な骨吸収抑制による血清カルシウムの低下や副甲状腺ホルモンの上昇を抑制することによると考えられている。また、ラロキシフェンとビタミンD製剤の併用についての臨床試験はまだないが、動物実験では有用性が示唆されている。骨折予防効果に差が見られなかったカルシトニン製剤も、疼痛抑制効果については知られており、疼痛を有する症例には併用されていることが多い。骨吸収抑制剤同士であるアレンドロネートとラロキシフェンの併用投与が骨密度と骨代謝マーカーに対して相加効果が見られた報告もある。今後、有用な併用投与についてなどの臨床的検討が必要である。
(メディカル朝日 2005年5月号より転載)
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