松前町立松前病院 整形外科(北海道松前郡)
吉田 顕
ここ数年で登場したビスフォスフォネート製剤(BP)およびラロキシフェン(RLX)は、大規模臨床試験により明確な骨折予防のEBMを持ち、我々臨床医の骨粗鬆症治療体系は飛躍的に進歩したと考えてよいであろう。さらに、これらの薬剤の骨折リスク減少(予防)効果が、古典的な骨密度(BMD)の増加により説明される率が極めて低いという事実が明らかになるにつれ、“骨質”の維持・改善というテーマがクローズアップされている。現時点では、“骨質”の変化を臨床現場でとらえる唯一の手段は骨代謝マーカーである。
本稿では、ビタミンDの最近の考え方と上記2剤の構造的・臨床的特性および骨代謝マーカーの変化に関する特性について筆者なりにまとめた。今後の使用方法選択の一助となれば幸いである。
活性型ビタミンDに関して
従来、活性型ビタミンDは骨粗鬆症において腸管からのカルシウム吸収、腎からのカルシウム再吸収を促進し、副甲状腺ホルモン分泌を抑制することを主作用として使用されてきた。しかし近年、多様な作用を有する内分泌ホルモンとしてとらえるとする考え方も広まっている。その作用は大まかに二つに集約される。
[1] 骨芽細胞を刺激し、主にミネラル化を正常化することにより骨形成を促進する。更にこの作用は骨吸収とは独立しており、骨吸収抑制剤による骨代謝改善はビタミンD不足状態では期待できない。
[2] 筋力増強、立位でのバランスの強化作用があり、転倒予防効果を有する。このような作用が明らかになる中、昨年の日本骨粗鬆症学会において、日本人の健康な中高年女性の血中ビタミンD(25OHD)濃度は、20ng/mLをカットオフとすると55%が不足状態であるとの調査結果が報告された(中村利孝:メディカル朝日 12:81,2004)。
このようなビタミンD不足の背景と作用機序の違いから、BPと活性型ビタミンDの併用は効果が期待できる。現在、BPと活性型ビタミンDの併用効果に関する大規模臨床試験(A-TOP JOINT-02)が進行中であり、さらなるEBMの集約を期待したい。
BP x RLX 特性の相違
現在報告されている文献と筆者の使用経験をもとに、2剤の特性を示した(下表参照)。
BP(特にアミノ基を有する)はRLXに比し、骨代謝回転を即効性に強力に抑制する点、BMDが骨折リスク減少効果に寄与する割合が大きい点が最大の相違点であろう。一方、近年、骨代謝回転の過度抑制が逆に骨強度の低下に結びついてしまう可能性が指摘されるようになり、RLXによる骨吸収マーカーの低下が適正レベル(≒骨質の改善)であるという考え方も広まりつつあるが、至適レベルに関する統一された見解は示されていない。近年、西沢良記は、RLXの骨吸収抑制はBPに比しやや弱く、骨代謝マーカーの変化率がMSC(最小有意変化)を超えない症例も存在するが、絶対値が基準値の範囲内であれば、効果ありと考えるべきであるとの見解を示している。自験例では、RLX投与後3カ月の血清NTxの変化率はALNの約50%という結果であったが、絶対値は基準値の範囲であった(Osteoporosis Japan VOL13. NO2投稿予定)。
女性の一生を考えると、閉経周辺期〜閉経後早期では、著しく亢進した骨代謝回転を一定レベルに下げ、これを維持していくことが目標となる。また高齢で既存骨折を有する症例では、骨代謝マーカーを速やかに抑制し骨折リスクを軽減することも必要であろう。すなわち、骨折リスクの程度に応じた骨代謝マーカーの目標値の設定や、薬剤ごとの各骨代謝マーカ−の至適レベル(絶対値)の設定が望まれる。
BP x RLX いかに使い分けるか
骨粗鬆症治療の究極の目標は“prevention of the 1st vertebral fracture”である。すなわち1個目の椎体骨折の発症は、2個目以降の椎体骨折および非椎体骨折の発症へと高率に進展していく(domino effect)。この意味から、4年間で既存椎体骨折を有しない症例の新規椎体骨折を1個予防するNNT(number needed to treat;治療必要数)がALN 60、RLX 34としたDelmasの報告は注目される。RLXの大規模試験(MORE)でも、既存骨折のない症例において新規椎体骨折を有効に抑制することが示されている(55%/3年)。著しく骨代謝が亢進している例では、BPを用いて一定レベルまで抑制し、その後RLXを維持薬として使用するという方策も紹介されている。
(メディカル朝日 2005年3月号より転載)
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