秋田大学医学部神経運動器学講座 整形外科学分野
宮腰尚久
日本で使用可能な骨粗鬆症治療薬のうち、ビスフォスフォネート製剤は圧倒的に豊富なエビデンスを有するために、骨粗鬆症治療の第一選択薬として定着しつつある。しかし、従来から使用されてきた薬剤の中にも、新たな効果が発見されることにより、その位置付けが見直されてきたものもある。特に活性型ビタミンD3製剤は、近年、筋力増強作用や転倒予防効果が明らかになってきたことから、骨折予防の観点から再び注目されるようになった。
臨床の場では、個々の患者の治療開始前の骨粗鬆症の程度(既存骨折数や骨密度など)や骨動態を分析し、年齢や生活環境などの患者背景を加味しながら、最適と考えられる薬剤を選択しなければならない。
治療薬選択までの手順
当科骨粗鬆症外来での治療薬の選択手順を紹介する。
骨粗鬆症治療薬選択の手順

まず、初診時にDXA法による骨密度測定と胸椎・腰椎2方向X線撮影、そして血液生化学検査を行う。骨折がなく、骨密度がYAM(young adult mean;若年成人平均値)の70%以上80%未満である“骨量減少”であれば、運動療法と食事療法を主体とする生活指導を行い、年1回の経過観察を勧める。骨密度がYAMの70%未満で椎体骨折が1〜2個程度の骨粗鬆症であれば、尿または血清中のNTX(I型コラーゲン架橋N末端テロペプチド)値で薬剤の選択を行っている。すなわちNTXが正常範囲内であれば活性型ビタミンD3製剤またはビタミンK2製剤を選択し、高値であればビスフォスフォネート製剤を選択している。また、骨密度がYAMの50%未満であったり多発性椎体骨折が見られるような重度の骨粗鬆症の場合には、NTXの値にかかわらず、骨折予防に対するエビデンスが最も充実しているビスフォスフォネート製剤を選択している。しかし、実際にはこのような例のほとんどはNTXの高値を伴っている。さらに高齢者(70歳以上が目安)の場合は、ビスフォスフォネート製剤に活性型ビタミンD3製剤を併用することも多い。これは、高齢者では栄養不足に伴いビタミンD不足に陥っている可能性があるためと、活性型ビタミンD3製剤による転倒予防や筋に対する効果を期待しているためである。
ビスフォスフォネート製剤の服用が困難な場合、例えば臥床を余儀なくされる場合やビスフォスフォネート製剤により胃腸障害を訴える場合などには、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM;selective estrogen receptor modulator)を選択している。SERMは、日本に導入されてまだ間もないが、海外ではビスフォスフォネート製剤と同等と考えられるほどの骨折予防効果が示されている。
前述のように、我々は初診時に一般的な血液生化学検査も行っているが、これは、肝・腎機能や血清カルシウム値など、薬物療法を開始する前の全身状態を把握するためと、他の骨量減少を来す疾患を鑑別するスクリーニングのためである。脊椎椎体骨折を主訴として受診する患者の中には、好発年齢が骨粗鬆症と一致する多発性骨髄腫や癌の脊椎転移などが隠れていることがあるため、注意を要する。
薬物療法開始後の経過観察
各種の薬物療法を開始後、3カ月以上半年未満の時点で、血液生化学検査と骨代謝マーカーの測定を行い、治療の効果や副作用の有無を調べている。脊椎X線写真と骨密度測定は、1年後までは半年に1回行い、その後は新規骨折の疑いなどの特別なことがない限り、1年に1回の頻度で行っている。活性型ビタミンD3製剤またはビタミンK2製剤を単独で服用している患者で、治療後に骨吸収マーカーが亢進し、さらに骨密度が低下してくるような場合、また新規骨折が見られる場合には、原則的にビスフォスフォネート製剤への変更または併用としている。
骨粗鬆症治療の最大の目的はあくまでも骨折の予防である。したがって、特に重度の骨粗鬆症患者では、薬物療法によって数%の骨密度を増加させることよりも、運動療法や生活指導により転倒予防を徹底することのほうが即時的な効果がある。また、脊柱変形を有する骨粗鬆症患者、特に胸椎・腰椎ともに後弯を示す全後弯変形(写真)の場合は、疼痛や日常生活動作の障害などによりQOLが著しく低下する。これらの患者に対しては、疼痛対策やリハビリテーションも含む包括的な治療が必要である。
(メディカル朝日 2005年2月号より転載)
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