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骨・骨粗鬆症

骨・骨粗鬆症 > 【解説】骨粗鬆症 > 治療戦略:整形外科医

整形外科医の治療方針・治療戦略

本邦における骨粗鬆症患者数は、約1,000万人と推計されています。そのうち、治療を受けておられる方は、わずか200万人程度といわれています。高齢社会に突入した今、今後益々骨粗鬆症患者数は増加して、個々の症例は重症化するでしょう。
骨粗鬆症は、他の生活習慣病と同じく早期発見と早期治療が重要です。最近では、地域住民を対象にした骨粗鬆症健診が活発に行われておりますので、まだ、ご自分の骨密度をご存知ない方は、骨密度検査を受けられることをお勧めします。



最近の報告では、女性では、最大骨密度に到達する年齢は15、16歳頃であることが明らかになりました。国民栄養調査では、女性における各年代におけるカルシウム摂取量は、7〜14歳は640mg、15〜19歳は502mg、20歳代では496mgとなっています。思春期から青年期におけるカルシウム所要量が700〜900mgであることを考えますと、前掲のカルシウム摂取の現状では、将来における低骨密度患者の増加が懸念されます。


女性には、妊娠、出産、授乳という、骨密度の低下やカルシウムの大きな喪失が発生する大きなイベントが控えています。20歳までに最大骨密度に到達しなかった場合には、妊娠中に妊娠後骨粗鬆症を発症させる危険性もあります。骨粗鬆症予備群であるカルシウム摂取量が所要量に満たない若年の方々は、栄養士の助言も参考にしながら、無理、無駄のないカルシウム摂取が必要です。

10代後半までに、遅くとも20歳までに最大骨密度に到達することを目標にしましょう。勿論、40歳を超え、閉経年齢に近づきつつある方々も、骨粗鬆症の3大予防策である運動、カルシウム摂取、日光浴を継続して骨密度の低下に備えましょう。



さて、それでは私どもの骨粗鬆症の治療方針についてご紹介致します。骨粗鬆症外来を受診された方々には、診察や検査の待ち時間を利用して、骨粗鬆症についての患者教育ビデオを視ていただき、その後、専任の看護師が、患者さんのカルシウム摂取状況や骨粗鬆症危険因子の有無についてお尋ねします。

それらの基礎情報をもとに、診察時には、骨代謝に影響をおよぼす疾患治療歴がないかどうかを調べ、神経学的検査、骨・関節の診察、単純X線学的検査、骨密度測定検査、骨代謝マーカー検査を実施致します。骨密度の測定は、腰椎正面平均骨密度を基本とし、必要があれば全身骨密度や大腿骨骨密度を測定致します。これらの診察結果や検査結果を、原発性骨粗鬆症診断基準2000年度版に照合して、骨粗鬆症の診断を行ないます。



骨粗鬆症の治療は、運動やカルシウム摂取等の生活指導と薬物療法に大別できます。

運動では、5000歩あるいは30分間の歩行を推奨しています。カルシウム摂取では、カルシウム摂取を阻害する食品を挙げるとともに、乳製品、魚類、野菜の各々におけるカルシウム吸収率を説明して、効率よくカルシウム摂取が行われるように指導しています。

ちなみにカルシウム吸収率は、乳製品50%、魚類30%、野菜17%ですので、乳製品からのカルシウム摂取を勧めています。夜間睡眠時にカルシウムが欠乏して骨からカルシウムが出ていき、その結果骨がやせますので、夜寝る前に牛乳を摂取しましょう。



骨粗鬆症の薬物療法では、骨密度を回復させるのみならず骨折の予防を目標とします。ビスホスホネート製剤は、骨密度を高めるとともに、大腿骨頚部骨折や腰椎圧迫骨折を予防します。最近登場したSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)もまた、これら骨折の予防効果が示されており、最近、処方されるケースが増えてきました。大腿骨頚部骨折は、1年間で患者の20%が死亡するといわれており、骨粗鬆症は決して生命に危険が及ばない疾患ではなく、骨折を来せば死亡に至る例がでて参ります。

65歳以上の高齢者の方々には、カルシウムの腸管からの吸収を促すビタミンDが不足していることが多く、活性型ビタミンD製剤単独、あるいはビスホスホネート製剤と活性型ビタミンD製剤との併用も有効でしょう。



治療効果は、6ヶ月毎の骨密度および骨代謝マーカーの測定と、臨床症状の改善度から総合的に判定しており、治療効果が低いと判断した場合には、治療薬の変更を行います。不幸にも骨折を起こした症例では、受傷日が患者さんの全身状態がベストであるとの認識をもち、早期リハビリテーションから実施します。大腿骨頚部骨折のように手術が必要な場合には緊急手術で対応します。術後には、急性期リハビリテーションからはじめ、全身状態が落ちつけば回復期リハビリテーションへと進展させます。大腿骨頚部骨折の場合、移動能力が受傷前の1ランク低下する場合が多いようです。従って、リハビリテーションの最低限の目標は、患者さんの受傷前運動能力までの回復となります。

最近、脊椎圧迫骨折を来して腰・背部痛が持続している方は、経皮的椎体形成術を実施することがあります。これは、骨折を起こして潰れている背骨の形を元に戻す手術です。「経皮的」という名がついているように、皮膚にごくわずかな切開を入れ、潰れた背骨を風船やヘラでもとの形に近づけます。しかし、骨折した背骨が神経を圧迫して運動障害や感覚障害を呈している場合には、経皮的椎体形成術では対応できません。神経を圧迫している骨を摘出あるいは削ることにより神経を圧迫から解放し、その後、背骨の固定を行います。この場合にも、手術前からのリハビリテーションの介入が理想的であり、術後も急性期からリハビリテーションを実施して、早期離床、早期社会復帰をめざします。



(監修 / 高田信二郎先生:徳島大学医学部整形外科講師)