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更年期の医学的なケア

薬のことをもっと詳しく知っておこう。

女性の加齢に伴う疾患(退行期疾患)はエストロゲンの低下と関係が深いことがお分かりいただけたと思いますが、ここではこれらの病気の主に薬による治療(薬物療法)について述べてみたいと思います。


更年期障害の薬物療法

更年期障害は、一言でいえば更年期にみられるさまざまな症状(医学的には不定愁訴と呼んでいます)でありますが、その主因がエストロゲンの低下にあるため、薬物療法の中で女性ホルモン剤が一番効果的です。女性ホルモン剤としては従来から、男性ホルモンも配合された男女混合ホルモン剤の筋肉注射がよく行われ、のぼせ、発汗、ほてりなどの症状に効果がありました。しかし、男性ホルモンによる男性化などの副作用のため、最近では後述するホルモン補充療法としてエストロゲン製剤ともう1つの女性ホルモンである黄体ホルモン剤を一緒に使用するようになっています。

更年期障害の諸症状とHRTの効果さまざまな更年期障害のなかで、ホルモン補充療法はどんな症状によく効くのでしょうか。私達の病院の産婦人科、更年期外来で調べた結果(※図2)を見てください。

よく効くのはのぼせ、発汗、ほてりなどの血管運動症状と呼ばれている症状、いらいらする、不安感、憂うつ感などの精神神経症状、不眠、夜間覚醒などの睡眠障害症状、頭痛などの各症状で、ホルモン補充療法を行って1ヵ月後には軽快する場合が多いようです。また1ヵ月後には効果が明らかでなくても、6ヵ月後には症状が改善することが多かったのは、手足のしびれなどでした。逆に1年間ホルモン補充療法を行ってもあまり効果が見られなかった症状は、疲れやすい(全身倦怠感)と心臓の動悸がある(心悸亢進)の2症状でした。これらの結果から更年期障害のすべての症状にホルモン補充療法が一様に効くわけではないことがわかっていただけると思います。

女性ホルモン剤の次によく用いられている薬剤としては、漢方製剤が挙げられます。更年期障害に薬効が知られているものとしては当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸などがあります。漢方製剤の場合その効き方には個人差がかなりあり、また西洋薬のような即効的な効果は期待できませんので、少なくとも2〜3ヵ月は服用してその効果を判定する必要があります。
また、精神神経症状が強い場合には、精神安定剤を使用することで症状の改善が見られる場合があります。

骨粗鬆症の薬物療法

閉経後の女性の骨粗鬆症は、医学的には「閉経後骨粗鬆症」と呼ばれています。その原因はエストロゲンの低下により骨が解けることを防止できないことにあります。したがって薬物療法としては、骨の溶解を防止するエストロゲン製剤が原因療法として理にかなっています。

エストロゲン製剤のほかにも骨粗鬆症にはさまざまな薬があるので紹介しましょう。骨の溶解を強力に抑えるビスホスホネートが現在では骨粗鬆症治療の基本となっています。そのほかに、腸管でのカルシウムの吸収を促進させる活性型ビタミンD3、骨の形成を促進させるビタミンK2などがあります。しかしいずれの薬剤を使用する場合でも、実際に効果が現れるまでには少なくとも6〜12ヵ月はかかりますので、気長に根気よく服用することが大切です。
更年期には骨粗鬆症はまだ発症しませんが、水面下では着々と進行しています。将来の骨折〜寝たきりを予防するため、ビスホスホネートやエストロゲン製剤などは、大切な役割を果たします。

高脂血症の薬物療法

高脂血症というのは、皆さんが気にするコレステロールや中性脂肪などの値が高い病気です。ではどんな値が要注意なのでしょう。健康診断などで数値が出てきたら関心を持ってみてください。

コレステロールの数値の見方日本動脈硬化学会が2002年に発表した「高脂血症診療のガイドライン」を見ると、血液中の総コレステロール値が220mg/dl以上、LDL-コレステロール(いわいる悪玉コレステロール)値が140mg/dl以上の場合を高コレステロール血症(高脂血症)と定めています。(※図3
しかし高脂血症と診断されても、治療としてはまず生活指導と食事療法を行うとされています。

実際の薬物療法としては、高脂血症剤と総称されているものが数種類あり、よく使われています。総コレステロール値が250mg/dl前後の比較的軽度の高脂血症ではホルモン補充療法が効果的な場合もあります。
高脂血症を防止することにより、動脈硬化を予防し、ひいては心筋梗塞や脳梗塞といった心血管系病変にかからなくてすむことになります。

尿失禁の薬物療法

尿漏れ(尿失禁)にはいくつかのタイプがありますが、突然強い尿意を覚えると我慢ができない切迫性尿失禁とおなかに強い力が加わると尿が漏れる腹圧性尿失禁があり、後者はエストロゲンの低下がその発生に関係しているといわれています。

薬物治療としては抗コリン剤、β2刺激剤と呼ばれる膀胱の筋肉の収縮を抑える作用を有する薬剤が中心となりますが、エストロゲンの低下との関係からホルモン補充療法も試される場合があります。

老人性膣炎の薬物療法

老人性膣炎は、エストロゲンの低下により膣の粘膜が萎縮し薄くなることにより発生する炎症で、自覚的には膣の乾燥感やかゆみ、出血や性交痛などの症状がみられます。その治療としては、エストロゲンの膣剤による局所療法が一般的ですが、最近ではホルモン補充療法の一環として、内服剤による治療が行われる場合も増えています。

( 監修 / 太田博明先生:東京女子医科大学 産婦人科学教授 )
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