関節痛〜ひざ・肩〜

スポーツと関節:サッカー・フットサル

→ サッカーのけがの特徴・中高年に多く見られる特性
→ けがの種類と治療
→ けがの予防や再発予防のためにはどうすればいい?
→ けがから復帰までは?
→ けがは、ダメージだけでなくチャンスでもある

サッカーのけがの特徴・中高年に多く見られる特性

広いグラウンドを11人対11人で攻防するサッカーは、運動量も多く、体力・テクニックのどちらも要求されるスポーツです。また、相手チームのプレーヤーと接触する機会も多く、けがに見舞われることも少なくありません。キーパー以外は、走ることと蹴ることが主な運動となりますので、サッカーのけがといえば、そのほとんどが肉離れや膝や足首の捻挫など下肢の外傷です。
足首の靭帯損傷が頻度的には一番高くなりますが、下肢の打撲は軽いものまで入れればゲーム中に必ずといっていいほどあります。
中高年のレクリエーションのサッカーでみられるのが、筋肉の怪我です。ハムストリングの肉離れやいわゆるテニスレッグ(内側腓腹筋挫傷)、アキレス腱断裂がみられますが、これは中高年の特徴でサッカーに限ったことではありません。

けがの種類と治療

足首の捻挫(足関節捻挫)

球技に限らず、全ての種目に共通してみられる足首の捻挫は、サッカーでとくに多いというわけではありませんが、サッカープレーヤーが捻挫をしてしまうと、ランニングやキックの障害になるので治るまでは競技に参加できなくなります。

足関節捻挫とは、足首に内反力や外反力がかかり、主に靭帯が損傷される疾患。靭帯損傷の程度により、治療方法や回復の予測が異なる。
症状 軽度:足首の軽い腫れと痛み
重度:広範囲の腫れと痛み、足関節の不安定感
足関節靭帯損傷 足首の靭帯損傷が認められた場合は RICE処置と必要な場合は固定を行います。ただし、長い競技生活のなかでひどい捻挫を繰り返した場合、正しい治療をしても少しずつ機能が低下するために、再建手術が必要になることがあります。ただ、一般にレクリエーションレベルでサッカーをしている人に関節の再建手術をするケースはあまりありません。

膝の靭帯損傷(十字靭帯損傷、側副靭帯損傷)

膝の靭帯損傷は、サッカーでも多くみられます。靭帯損傷は、損傷の程度やプレースタイル、要求レベルにもよりますが、手術が必要な場合があります。最近は、靭帯損傷が見落とされ機能障害が重症化する例は減ってきています。理由としては、医師の診断レベルのみならず、指導者やコーチ、トレーナーのレベルが向上し見過ごしが少なくなったこと、靭帯を損傷した本人が、医師より予後の説明を適切に受けているため、けがに対する一般的な理解レベルが向上してきたことがあげられます。

ひざの内部構造

前十字靭帯とは、踏ん張った側の膝が外反し、大腿骨が外旋する(すなわち膝が外反+内旋する)際に損傷する。とくにスポーツ活動中、ジャンプで着地した際、急な減速や方向転換の際に損傷することが多い。
症状 受傷時の断裂音、膝の痛みや腫れ
過去の損傷が時間経過した症状:関節の不安定感、膝崩れ現象(歩行中などに不意に膝がガクッと抜ける感じ)、脱臼感
前十字靭帯損傷 サッカープレーヤーが前十字靭帯を損傷すると、自然治癒が期待できないため、手術をしなければプレーレベルが著しく低下してしまいます。とくにサッカーでの問題は、前十字靭帯の損傷によってフットワークやキックの際の軸足の機能が低下することです。そのため、軸足を変更しなければ、サッカーを続けることが難しくなります。
では、レクリエーションレベルでプレーしている人が靭帯損傷した場合は、手術が必要でしょうか。答えは、「結論を急がずに、リハビリをし、スポーツ復帰を試みたうえで判断する」といえます。手術は、自家腱(自分の膝周りの腱)や人工腱などをもちいた靭帯再建術が一般的です。再建術の適応については術後の時間的な投資(リハビリに多くの時間が必要)、犠牲(欠損:正常な自分の腱を靭帯として代用する)などの面も考慮して、個々に検討しなければなりません。
後十字靭帯損傷 ラグビーなどでは多いのですが、サッカーでは少なく、かつスポーツの障害にはなる度合いが前十字靭帯に比べて少ないので、手術が適応されることは多くありません。プロのサッカー選手でも、後十字靭帯を損傷したままプレーしている人もいます。
内側側副靭帯損傷・外側側副靭帯損傷とは、膝に外反力や内反力がかかり損傷する。十字靭帯損傷を合併することが多い。
症状 受傷時の断裂音、膝の痛みや腫れ、運動制限や歩行障害
過去の損傷が時間経過した症状:関節の不安定感
側副靭帯損傷 サッカープレー中に、足を 引っかけられたり、相手とインサイドで蹴りあったりすると損傷します。十字 靭帯損傷を合併しない場合には、保存療法が基本です。が、繰り返していくう ちに難治性の痛みと不安定性が残る場合は、手術を検討します。

半月板損傷

サッカーに限らずスポーツ外傷では、半月板損傷は依然として多くみられます。治療は、半月板縫合術と半月板切除術があります。関節鏡で正確な診断が可能なため、損傷範囲が広い場合は関節鏡視下での半月板縫合術が行われます。高度の変性や変形がある場合には半月板切除術が行なわれます。
スポーツにより膝に負荷がかかるため、半月板切除によって潜在的な軟骨損傷が顕在化してしまうケースが少なくありません。
ただし、レクリエーションレベルのサッカーの場合、1日2時間程度の運動を週2,3回の頻度であればあまり問題はありません。レクリエーションの場合、とくに中高年の方はあくまでも練習の量ではなく練習の質に重点をおいたほうがいいでしょう。

ひざの内部構造

半月板損傷とは、膝が曲がった状態での捻りや、その態勢から急に立ち上がった際に損傷する。若年者ではスポーツ外傷によって多く発生。
症状 膝の痛みや腫れ、運動障害、歩行障害、ロッキング(傷んだ半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれ、全く膝の曲げ伸ばしが出来なくなる状態)、膝くずれ現象(歩行中、不意にガクッと膝が抜ける状態)

けがの予防や再発予防のためにはどうすればいい?

けがの予防や過去のけがの再発防止には、どのようにすればよいのでしょう。一言で言えば、「頭が良くなること」-つまり、自分で自分のからだの状態を把握して、正しく管理をすることが重要です。自分のからだの状態とは、膝の曲げ伸ばしの角度(膝が完全に伸びるか、曲がるか)と練習後の痛みがどの程度か。それにより、自己診断をして、練習量や方法を変更します。
膝の健康は、ももの前後の筋肉とすねの前後の筋肉のストレッチの状態にも現れてきますから、筋肉が硬くなれば膝にも悪影響がでてしまいます。筋肉のストレッチは、それ自体が治療的な効果もありますし、診断でもあります。練習前にウォーミングアップとしてのストレッチは、ほとんどの方が行いますが、練習後にも解きほぐす意味だけでなく、診断の一助として行うと良いでしょう。練習後は、疲労からストレッチするときつく感じることがあります。「今日は痛くて完全に伸びない」となれば、黄色信号。運動が過度であったと判断でき、次の練習までどうコンディショニングするかということを考えるのです。
また、30代になると筋力の衰えが目に見えてきますから、レクリエーションであっても、筋トレが必要になります。一番に大腿四頭筋やハムストリング、中高年がよく肉離れを起こすふくらはぎの腓腹筋もある程度は必要です。

けがから復帰までは?

運悪くけがをしてしまった場合も予防と同様に、自分のからだの状態を把握しながら復帰スケジュールにそったメニューを実行すればよいでしょう。
なにもしなければ、当然、日常生活への復帰も遅れてしまいますので、きちんとスケジューリングをして、自分の回復レベルをつねに確認しながら、復帰を目指します。回復レベルは、関節の角度やストレッチの程度などの局所的な問題と、トータルの歩く、走るときのレベル、さらにトレーニングの前後のけがの部位の状態を比較すればその時の運動能力をかなり正確に判断できます。

復帰スケジュール・回復レベルの目安

けがは、ダメージだけでなくチャンスでもある

けがをしてしまうと、肉体的、精神的、そして時間的にもダメージであることは否定できません。しかしながら、考え方次第では、「けがは、チャンスでもある」といえます。けがをしたことで、整形外科医から正しい知識を具体的に自分の例で教わることができます。それは、たとえば膝のけがならば、膝だけでなく股関節や腰にも応用できるのです。けがをダメージだけに終わらせず、前向きに、自分のからだのことを学習するチャンスと捉えることができれば、より長くより楽しくスポーツを楽しめることができるでしょう。

(監修:星川吉光先生/聖路加国際病院整形外科部長)
特別協賛:中外製薬株式会社,後援:日本骨粗鬆症学会 (C)yutakanahone-suishin-iinkai